高等女学校の課業(授業)
「一、生徒、教室出入りのこと。課業をはじむる時は鐘をうつと同時に生徒は教室前に整列し、役員の指揮により教室に入り静粛になすこと
一、生徒、応答のこと。教師発問の際の生徒の答えの時は起立するか否かにつきては1・2年は起立の上、答えしむ。3年以上はことがらの如何によりて随意とす。ただし、まとまりたる答えの時は起立せしむ。くハイ>の返事は自然のなりゆきにまかすべし」というわけで、なかなか細やかである。さらに、「課業中の心得。教師の発問に答うる時はその右手を挙ぐべし。左手挙手はこれを禁ず」とわざわざことわってある。ちょっと考えると、右手に鉛筆を持つのだから左手の方
が便利のようにも思えるし、それに左利きの人はどうなるのかなどの問題もあるが、左手は不浄なものにふれたりするところから、「左手不浄」とする回教徒的な宗教観念と一脈相通じるものがあるようだ。
再び、教師側の内規をみると、「教師の生徒に対する態度はなるべく厳粛なるを可とす。教師の生徒に対する言語はあまり丁寧ならざるを可とす。敬語を用いざるよう
なすこと」とある。さらに、授業の内容についてみても、現在では教科書に書き込む人、ノートに音いている人、雑記帳に書いている人そうかと恩うと頭の中に書いている(?)人など、まちまちなのが現状であるが、おもしろいことに昔はみな決められていたらしい。理科実験の授業風景
国語の授業風景
実科女学校時代の記録では、修身、作法、講読、作文、文法、習字、歴史、地理、算術、理科、家事(理論と実習)、図画、唱歌、裁縫、手芸、(以上、名称は記録通り)の15科目のうち、「教科書に書き込むべし」と定めたのは地理、歴史の2科目だけ。修身、習字、理科の3科目は「ノート随意」、「練習帳または雑記帳を用うべし」つまり、ノートをとらなけれぱならないと決めたのは、作法、講読、文法、算術、家事、手芸、裁縫の7科目で、また「作文は草稿帳、図画は成績帳(今のスケッチブック)、唱歌は楽譜帳をそれぞれ用うべし」とある。練習帳とはいっても今の間題集のようなものではなく、「表紙は質素で飾り少なきものにて罫のなきもの約80ページ」とまあそんなことまで入含に決めてある。しかもそれを「練習帳雑記帳調査審護委員会」(今の学習指導部)といういかめしいものをつくってその案を決めたとのことである。現在の高校生諸君がこれを読むと、「ざぞ窮屈だったろうなあ」と同情する人もあろうが、また逆に、うらやましい面もないではない。というのは授業に考査はつきもの。次に、その考査問題の一例を挙げてみよう。
講読考査聞題
一、次の語句を解釈せよ。
1 鞆の音すなり
2 いより立たしし
3 楯立つらしも
4 言ひけらく
5 命(ミコト)以ちて
二、書き取り
わが新エイ陸軍バクゲキ隊は沖縄本島北
飛行場上空に殺到クワカンなコウゲキを
加へ大なるセンクワを収めた。
以上
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