子どもとのかかわり

 

【乳児期 0歳~2歳ごろ】

 生まれたばかりの赤ちゃんにとって、周りは様々な色、音、匂い等の刺激に囲まれた未知の世界です。そうした世界を少しずつ知っていき、「この世界は安心なんだ」「自分は受け入れられているんだ」と信じられるようになることが、この時期のこころの発達にとって最も大切なことだと言われています。

 赤ちゃんは一見無力な存在のように見えますが、一生懸命周りに働きかけています。にっこり笑ったり、「あーあー」と声を出したり、びっくりするような声で泣いたりすることは、周りの養育者とつながるために大事なことなのです。笑ったら笑い返してもらえる、泣けば誰かが助けてくれる、不快な状態は長くは続かないといった体験を繰り返していくうちに、赤ちゃんの中には周りの世界への安心感が育まれていきます。これを「基本的信頼感」と呼び、この先の長い人生の中で、様々な困難があっても、周りや自分をなんとか信じて生き抜いていくための最初の土台となるものです。さらに、養育者が自然に抱っこしてあやしたり、なでたり、話しかけたりといったスキンシップや声かけをすることは、赤ちゃんがより強い安心感や世界とのつながりを感じられるようになっていく、とても大切なものなのです。

 生後3か月ごろには首がすわり、半年を過ぎるころにはハイハイをし始める等、動くことができる範囲が広がっていきます。身体の発達に伴って、周りの世界を知ろうとする行動も活発になっていくものです。そして、その行動は、実はそれまでの養育者とのかかわりによって育まれた安心感に支えられているのです。初めのころは、安心感を与えてくれる養育者のそばでしか遊ぶことができず、少し離れてはすぐ戻ってくるといった繰り返しになります。養育者が見えなくなると不機嫌になったり、かんしゃくを起こしたりということも出てくるでしょう。後追いが大変なのもこの時期です。このような赤ちゃんのこころの動きに十分に付き合ってあげることで、赤ちゃんは「(養育者は)目の前にいなくてもちゃんといるんだな」ということが分かってきて、徐々に活動できる範囲が広がっていきます。

☘こんな心配ごとや困りごとが出てきたら『子どもとのかかわりQ&A』へ☘
 〇赤ちゃんが泣き止まず、イライラして手をあげそうになる(3か月)
 〇人見知りがひどく、あまりに泣くのでつい抱っこをしてしまう(9か月)
 〇忙しいのでスマホやタブレットの動画ばかり見せてしまう(12か月)

【幼児期 1歳~6歳ごろ】

 徐々に活動の範囲が広がってくるとともに、この時期は言葉を覚え、自分ができることにチャレンジをすることを通して「自分」というものが芽生えてきます。

【幼児期前期:1歳~3・4歳ごろ】

 子どもは興味関心を抱いたものに指さしする等、養育者にも一緒に「見て」とサインを送ってきます。そうした時、養育者が指さしをしているものを一緒に見て「これは〇〇だよ」とその名前を説明します。この繰り返しが、子どもが言葉を覚えていく手助けとなっていきます。子どもは養育者の言葉と表情を頼りにしながら、言葉を学ぶ楽しさを覚えていきます。 

 また、この時期、歩けるようになり、食事をテーブルで取れるようになる中で、子どもにとって最初の「しつけ」が始まります。自分で「トイレに行きたい」というサインを出す練習をしたり、おむつからパンツにチャレンジしたり、着替えや食事等、養育者のサポートを受けながら、少しずつできることが増えていきます。

 その中で、養育者のサポートに対して「イヤ!」「ダメ!」と主張し始めます。養育者としてはサポートが必要と思っていても、子どもは「自分でできるもん!」とゆずらないことも出てきます。この「自分でできるもん!」という気持ちを大切にしながら、上手くできなくても根気よく付き合っていくことが、子どもの「自分でやろうとする力」を育てることになります。

【幼児期後期:3・4歳~6歳ごろ】

 子どもの世界は「遊び」を通しても広がっていきます。一人遊びから、友だちと一緒に遊ぶようになっていきます。友だちの輪が広がることで、いたずらに没頭してみたり、けんかをしたりと、養育者にとっては心配なことも増えてくるでしょう。

 しかし、こうした経験の中で、自分の意見を主張したり、我慢したりしながら、集団の中で過ごす力を身に付けていきます。すべてが自分の思い通りにはいかないという体験から、様々な感情を抱くようにもなります。「悲しい」「悔しい」「どうしたらいいの?」等、子どもだけではもてあましてしまうような感情もわいてくるでしょう。すねたり、急に泣き出したりして大人は扱いに困ると感じることも出てきます。そうした時は、必要に応じて「嫌だったのかな」「どうしたかったのかな」と一緒に考える時間を作りながら、自分の感情と付き合っていくお手伝いをしてあげてください。

☘こんな心配ごとや困りごとが出てきたら『子どもとのかかわりQ&A』へ☘
 〇同い年の子より言葉が遅いように思う(1歳6か月)
 〇何を言っても「イヤ」「ダメ」とばかり言うのでつい怒ってしまう(2歳6か月)
 〇オムツは取れたのに、また、おもらしが始まった(3歳)
 〇友だちと仲よく遊べない(4歳)
 〇一人遊びが多い(5歳)    

   

【児童期 6歳~12歳ごろ】

 「自分」が芽生え、友だちとの輪が広がっていく中で、本格的な集団生活が始まる時期に突入していきます。そして、様々なことを学び、新しい経験を積み重ねていきます。

 学校に入ると授業があり、初めて学ぶことも多いでしょう。また、委員や係の活動等を通して、子ども同士で協力しながら役割を果たす場面も増えていくでしょう。そうした中で、自分にとって「できることもある」「苦手なこともある」ということを体験していくことになります。

 そのため、この時期に大切なことは、チャレンジしてみようという意欲や苦手なことでもがんばろうとする姿勢をサポートしていくことです。学校で学んだことや毎日の宿題でも、「がんばったね」と声をかけてもらうことで「達成感」を持ち、「またがんばろう」という力につながっていきます。できていることや得意なことを認めていくことはもちろんですが、苦手なことでも努力したことを認めていくことで、自分に自信が持てるようになり、「やる気」や「努力する大切さ」を身に付けていくことになります。

 また、自分が興味を抱いていることに身近な大人が関心を示してくれることで、「意欲」もわいてきます。子どもにとって身近な大人からの声かけやサポートは、子どもたちの「やってみよう(挑戦しよう)」という力を育てていくことにつながっていきます。また、もう一つ大切なことは、学年が上がるにつれて友だちと過ごす時間が増え、その中で人との付き合い方や自分たちで問題を解決する力を身に付けていくことです。特に3、4年生ごろから自分たちだけのルールを作ったり、大人に内緒で行動したりするようになり、仲よしグループがとても大事なものになります。時には子どもたちで結束して、大人に反発し、みんなで羽目を外した行動に出てしまうこともあります。子どもたちの自発的な行動を尊重しつつ、関心を持って見守ることが大切になってきます。

 そして、高学年になると、大人から見ればまだまだ子どもですが、もう思春期の入口が見え始めています。

☘こんな心配ごとや困りごとが出てきたら『子どもとのかかわりQ&A』へ☘
 〇勉強の習慣が身に付かず困る(小2)
 〇落ち着きがないように見える(小3)
 〇友だちとの関係に悩んでいる(小4)


【思春期 12歳~18歳ごろ】

 思春期に入ると、養育者も子ども自身も、それぞれが「子どもなのか、大人なのか」と、その狭間で様々な葛藤を抱いていくようになります。

【思春期前期:12歳~15歳ごろ】

 小学校高学年ぐらいから、身体の成長とともに、もう小さな子どもではないという気持ちや性への関心が本人の意思にかかわらず現れるため、そのことに少なからず戸惑いながらも過ごしていきます。今まで大きな存在だった養育者も、自分と変わらない不完全な人間ではないかと思うようになり、親に代わる別の理想像を探すようになります。性にまつわるいろいろな思いも親には知られたくないものです。                                          
      
 そうした過程で、養育者や身近な大人に対して距離を置き「秘密」を持つようになります。それは決して悪いことではなく、養育者から独立した自分を自覚するきっかけになるものです。何でも話をしてくれていた子が、あまり日常生活のあれこれを家庭で話さなくなるというのも、それほど不思議なことではありません。

 そして、そのような「秘密」を共有できる親密な友人の存在が重要になってきます。このような友人関係を通して、「この友だちのようになりたい」という思いと、「そうはなれないのでは?」という葛藤を抱えながら、児童期までとは違う「自分」を見つけていくことになります。そうした中で「自分は周りからどう見られているのか」と意識し始めて不安を抱きやすくなります。

 このようにこころの中で様々なことが起こっているため、子どもは不安定になりやすく、大人から離れたかと思うと近寄ってきたりすることもあり、大人にとっては、距離の取り方が難しいと感じることも多くなるでしょう。

【思春期後期:15歳~18歳ごろ】

 10代後半になると、身体の急激な成長は落ち着き、精神的な活動が活発になります。養育者とのこころの距離はさらに広がり、恋愛対象への関心も高まります。また、家庭外での重要な他者(先輩、教師、著名人、歴史上の人物、アニメの主人公等の空想上の人物等)が理想像として大切なものになってきます。
        
 新しい自分の姿を求めていろいろな活動や人とのかかわりを経験する中で、成功と失敗を繰り返しながら試行錯誤し、もがき苦しみます。理想と現実とのギャップから、「自分はいたって平凡なんだ」と実感させられ不安になることもあります。そして、その不安を打ち消すために「自分はできる」と強くこだわったり、「他人の意見を頑なに聞き入れようとしない」といった態度に出ることもあるでしょう。

 そのような苦しさの中から、これまでの自分と折り合いをつけ「今の自分も悪くないな」「こんな自分であれば今後もやっていけるのではないか」と、これからどう生きていくのかを見つけ出していきます。そのような際には、周りの大人や友人や恋愛対象となる相手等、「自分」を認めてくれているということが、大きなこころの支えとなります。

 このように、思春期の子どもが大人への階段を進む時期というのは、非常に危うく激動の中にあると言えます。守ってくれていた養育者から離れ、「自分とは何か?」を探りながら生きていく、孤独な時期でもあります。周りから見ると一貫性がなく矛盾した言動も見られるかもしれません。それでも、否定したり突き放したりせず、見守ることが大切です。この時期の子どもは、大人に対して「年長者としての意見」よりも、「対等な人間としての意見」を求めています。大人は、「一人の人間」として子どもを尊重することを意識してかかわりましょう。

☘こんな心配ごとや困りごとが出てきたら『子どもとのかかわりQ&A』へ☘
 〇ちょっとしたことでも反抗するのでどう接していいか分からない(中2)
 〇スマホ依存にならないか心配(中3)
 〇好きな同級生に1日に何回もSNSでメッセージを送る(中3)
 〇「しんどい」とばかり言って何もしないので将来が心配(高1)
 〇外見ばかり気にして他のことに興味を持ってくれない(高2)
 〇リストカットをしているようだ(高2)  


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